【支配人】名作別荘のビフォー・アフター

広島県福山市、鞆の浦をのぞむ 美しい木造建築!
後山山荘(うしろやまさんそう)という別邸です。


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〜後山山荘のHPよりご挨拶文〜

瀬戸内海国立公園のほぼ中心にある自然景観と歴史の町、鞆の浦(広島県福山市鞆町)を一望する高台に位置する「後山山荘」は、建築家・藤井厚二(1888-1938)が兄・与一右衛門のためにつくった昭和初期の鞆別荘を、現代建築家・前田圭介が受け継ぎ再生(2013)させた建築です。

後山山荘は、藤井厚二の京都・大山崎「聴竹居」と同じデザインのサンルームがあり、天井に排気口があるなど藤井厚二自らが興した環境工学の考えを示していて、藤井厚二がつくった過去の建築と、前田圭介がつくった現代の建築を同時に見ることができます。
また、ここには美しい景観や庭園、歴史や文化があります。
後山山荘の南東方向には、瀬戸内海に浮かぶ島々と鞆の街並みの絶景を楽しむことができます。日の出から夜まで刻一刻と姿を変える海と町の景観に時が過ぎ行くのを忘れるほどです。西側の山手には、藤井のデザインによる日本庭園があり、四季折々に変化を見せるモミジを中心とした植栽、花々の移ろいを楽しむことができます。奥の木陰には「禽浴(きんよく)の滝」があり、小鳥が水浴をする姿が見られることもあります。
さらに、結城素明(ゆうきそめい)筆「琴棋書画襖絵(きんきしょがふすまえ)」や、この山荘のために書いた藤井与一右衛門の漢詩「鞆八景」も残されています。鞆での生活やその自然景観、季節の移ろいなどが文化となり歴史となって積み重なっているのです。

私たちは、後山山荘における建築的、景観的、文化的、歴史的な価値を掘り下げて見直すとともに、その価値をさらに高めるため利活用を促進し、地域に根差した生活の美学や空間の魅力を再確認しつつ、維持管理・保存し、もって地域の建築文化や観光の発展に寄与したいと考えています。
後山山荘倶楽部 共同代表
松隈   章
谷藤史彦
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もとは藤井厚二という有名な建築家の兄、藤井与一右衛門さんの別荘です。
この別邸を改築された、前田圭介さん(UID一級建築設計事務所)という若い建築家のお話を伺う機会がありました。
あまりに面白かったのでご紹介します!

ビフォー写真がこちら

*迫力あります…

朽ちかけた住宅、、もしや藤井厚二の作品なのでは…という調査から始まり
改築には設計三年+工事一年かかったとのこと。

損傷が激しかったのですが、もしも解体してしまって「藤井厚二の建築を壊した男」として名前が残っては大変だ…
というプレッシャーもあって、一生懸命取り組まれたそうです。
(聞いてる方も胃が痛くなりますね…)

古いため天井が落ちていたり、蔵の中に使われなくなった建具がたくさん残っていたり…
そんな部材を一つづつ確認し、現場で洗浄して、改築後もきれいに使われました。


支配人のツボだったのはこの写真!
現場は山の上だったので、コンクリートの打設には100mほど菅をつないで下のミキサー車から圧送したそう。

コンクリートの打設は一回勝負!!
やり直しが利かないのですが、菅の途中でセメントが分離してしまってうまく圧送できず、一度目は失敗したそうです。(ひぇ〜〜)
もう後がない二回目は配合を変えて、やっと無事に打設ができたとか。


軽い屋根建材の普及で、昔ながらの瓦の職人はどんどん減っているんですね。
一般的には、瓦を直接載せていくので、こういう光景は珍しいのではないかと思います。
瓦のレベル(高低差)を揃えるために、一定数を並べて削って形を整えて一気に屋根に上げたそうです。


前田さんはもとの家の「壁土」も何かに使えるかもと、取り置いていたそう。
(こういう、他の人が考えないことをやってしまうのが凄いですね…)

左官職人の親方が土を丁寧に濾し、裏山の土を混ぜて調色し、十種類以上もサンプルを作ってくれて色を決めたのだとか。
素晴らしい職人さんです。

前田さん、建て方(木造の骨組みを一気に組み上げる上棟式)のときに、やっと「この現場は行けそうだ」と確信が持てたそう。
新しく建てるよりもずっと難しい現場だったんですね。
その努力と完成した建築の美しさに、感銘を受けました。

完成した作品は、藤井厚二と前田さんの二人の建築家の息吹が宿っていますね。

後山山荘は、月一回(第二日曜日)に公開されています。
詳細はこちら。
http://ushiroyamasansou.com

*写真はすべて、UID一級建築士事務所からご提供いただきました。

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