民泊を始めるには、物件の立地が「民泊に使える土地」にあるかを確認することが出発点になります。土地の用途規制は用途地域によって決まり、民泊の可否は自治体の条例や住宅宿泊事業法の要件にも左右されます。
この記事では、用途地域の基本と調べ方、用途地域以外に確認すべき制度、そして物件選びでよくある失敗と対策まで解説します。
この記事でわかること
- 用途地域の基本と、民泊に関係する地域の種類
- 自分の物件がどの用途地域にあるかの調べ方
- 用途地域以外に確認すべき制度(条例・建築基準法・消防法・旅館業法)
- 用途地域の確認でよくある失敗と対策
民泊ができる用途地域・できない用途地域の基本
用途地域は、民泊物件を選ぶときに最初に確認したい項目です。まずは用途地域の考え方と、民泊が認められる地域・制限される地域を整理します。
用途地域とは
用途地域とは、都市計画法に基づいて市街地の土地利用を13種類に分類した制度です。住居系・商業系・工業系に大別され、それぞれの地域で建てられる建物の種類や用途が制限されます。
この制度によって、住宅地に工場が建つことを防いだり、商業地の住環境を守ったりする役割を果たしています。民泊営業でも用途地域によって可否や制限内容が変わるため、物件選びの最初の確認事項になります。
住宅宿泊事業法で民泊が認められる用途地域
住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出住宅は、建築基準法上は「住宅」として扱われます。そのため、住宅を建てられる用途地域であれば民泊を行えます。
具体的には、住宅の建築が認められない工業専用地域を除く、次の12の用途地域で民泊営業が可能です。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
民泊を届出できないのは、住宅の建築そのものが認められていない工業専用地域です。ただし、住居専用地域などでは自治体の条例で営業日数や区域がさらに制限される場合があるため、後述の条例確認が必要です。
なお、旅館業法に基づく簡易宿所として運営する場合は、これとは別に用途地域ごとの建築可否(後述)を満たす必要があります。
住居専用地域で上乗せされる条例規制の扱い
住宅宿泊事業法の年間営業日数180日以内という上限は、用途地域を問わず全国一律で適用されます。そのうえで、住居専用地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域)では、自治体の条例による上乗せ規制がかかりやすい点に注意が必要です。
具体的には、自治体の条例で「平日の営業を制限する」「学校周辺では営業日数を大きく制限する」といった上乗せ規制が設けられているケースがあります。例えば、金曜日正午から日曜日正午までの週末のみ営業可能とする自治体や、年間営業日数を180日よりさらに短く設定している地域もあります。
住居専用地域の物件を検討するときは、全国一律の年間180日制限だけでなく、自治体独自の条例内容まで確認しておきましょう。
用途地域の系統別に見た民泊との関係
用途地域は住居系・商業系・工業系の3つに大別できます。系統ごとに民泊との関係を整理します。
住居系の用途地域
第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域・第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・田園住居地域の8つが住居系の用途地域です。
住宅を主目的とする地域のため、住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊は、届出によって営業できます。ただし年間の営業日数は180日以下に制限され、自治体によっては条例でより厳しい制限(例:平日の営業禁止、面積要件など)が設けられている場合もあります。
なお、旅館業法に基づく簡易宿所営業として民泊を行う場合は、用途地域上「簡易宿所」の建築が認められる地域である必要があります。低層住居専用地域および中高層住居専用地域では、簡易宿所の建築は認められていません。
また、2018年に新設された田園住居地域は、農業と調和した低層住宅地を守るための地域で、旅館業法に基づく簡易宿所などの宿泊施設の建築は原則として認められていません。この地域での民泊運営には制限がある点に注意しましょう。
商業系の用途地域
近隣商業地域・商業地域の2つが商業系の用途地域です。商業施設の立地を主目的とする地域で、簡易宿所を含む宿泊施設の建築が認められる範囲が広くなっています。
住宅宿泊事業法による民泊も行いやすい地域といえます。
工業系の用途地域
準工業地域・工業地域・工業専用地域の3つが工業系の用途地域です。準工業地域では簡易宿所の建築が認められています。
一方、工業地域・工業専用地域では、旅館業法に基づく宿泊施設の建築は原則として認められていません。住宅宿泊事業法による民泊は、住宅を建てられる工業地域では届出によって可能ですが、住宅そのものが建てられない工業専用地域では届出できません。
物件の用途地域を自分で調べる方法
用途地域は、次の方法で自分で調べられます。物件を検討する段階で確認しておきましょう。
自治体の都市計画情報サイトを使った確認手順
用途地域は、各自治体が提供する都市計画情報サイトで確認できます。多くの自治体では、地図上で住所や地番を入力するだけで用途地域が表示される仕組みを整備しています。
確認手順は次のとおりです。
- 「(自治体名) 都市計画情報」「(自治体名) 用途地域」で検索
- 自治体の都市計画マップまたはGISシステムにアクセス
- 対象物件の住所または地番を入力
- 表示された地図で色分けされた用途地域を確認
- 必要に応じて都市計画図をダウンロードまたは印刷
東京都・大阪市・横浜市などの大都市では、詳細な都市計画情報がオンラインで公開されています。一方、小規模な自治体では紙の都市計画図を窓口で閲覧する必要がある場合もあるため、事前に確認方法を問い合わせておくと安心です。
役所の窓口で確認する
自治体の都市計画課や建築指導課の窓口で、担当者に直接確認する方法もあります。用途地域だけでなく、条例の規制内容や民泊の届出要件まで、あわせて聞けるのがメリットです。
不動産会社・売主への確認時のポイント
不動産会社や物件オーナーに確認するときは、次の質問を具体的に行いましょう。
- 物件の用途地域は何か(13種類のうちどれに該当するか)
- 民泊営業を制限する自治体条例の有無
- マンションの場合、管理規約で民泊が禁止されていないか
- 過去に同じ建物で民泊営業の実績があるか
- 近隣住民との間で民泊に関するトラブルがなかったか
口頭での回答だけでなく、重要事項説明書や管理規約の該当箇所を書面で確認しておくと、契約後のトラブルを防げます。
登記簿や売買契約書の資料を確認する
土地の登記簿謄本や売買契約書の資料には、土地の地目や面積が記載されています。ただし用途地域そのものは記載されていないため、あくまで補助的な確認手段と考えましょう。
用途地域以外に確認すべき制度・法規制
用途地域の確認だけでは、民泊の可否を判断できません。次の制度もあわせて確認しましょう。
自治体の条例
住宅宿泊事業法では年間180日まで営業できますが、自治体の条例により営業日数・営業時間・営業エリアがさらに制限される場合があります。観光地や住宅密集地では、独自の上乗せ規制が設けられているケースが多く見られます。
マンション管理規約
分譲マンションでは、管理組合の規約で民泊営業が明確に禁止されている物件が増えています。用途地域上は問題なくても、規約違反となれば営業できません。
建築基準法上の用途
建物の登記簿上の用途が「共同住宅」「寄宿舎」などの住居系である必要があります。「事務所」「店舗」では住宅宿泊事業の届出ができない場合があります。
既存住宅を民泊に転用するときは、建物の構造や避難設備が基準を満たしているかもあわせて確認しておきましょう。
消防法・旅館業法との関係
建物の規模や構造によっては、消防設備の設置義務が生じる場合があります。また、年間180日を超えて営業する場合は旅館業法の許可が必要となり、用途地域の制限も異なってきます。
旅館業法の簡易宿所営業として運営する場合は保健所への営業許可申請が必要で、客室延床面積が33㎡以上(宿泊者を10人未満とする場合は1人あたり3.3㎡以上)といった面積基準や、台所・浴室・トイレ・換気設備などの要件を満たすことが求められます。
用途地域確認時によくある失敗と対策
用途地域の確認では、いくつか見落としやすいポイントがあります。代表的な失敗と対策を整理します。
用途地域が混在する物件の注意点
用途地域の境界線上にある物件や、敷地が複数の用途地域にまたがる物件では、どちらの用途地域が適用されるかの判断が求められます。
原則として、敷地の過半を占める用途地域の規制が敷地全体に適用されます(過半主義)。境界線付近の物件を検討するときは、自治体の建築指導課または都市計画課で個別に確認しておくと安心です。
また、用途地域は都市計画の見直しにより変更されることがあります。購入時は問題なくても、将来的に規制が強化される可能性も考慮しておきましょう。
条例による上乗せ規制の見落とし
住宅宿泊事業法の施行後、多くの自治体が独自の条例を制定しています。よくある上乗せ規制の例は次のとおりです。
- 学校・保育施設周辺での営業制限
- 住居専用地域での平日営業禁止(週末のみ営業可)
- 特定の観光エリアでの営業日数制限
- 家主不在型民泊の届出制限または禁止
- 住民説明会の開催義務
条例の内容は自治体により大きく異なるため、物件所在地の自治体ホームページで「住宅宿泊事業 条例」を検索し、最新の規制内容を確認してください。観光課や都市計画課に直接問い合わせると、より正確な情報が得られます。
マンション管理規約で民泊禁止のケース
用途地域や条例では問題なくても、分譲マンションの管理規約で民泊が禁止されている場合は営業できません。国土交通省の調査では、多くの管理組合が民泊禁止の方針を規約に定めています。
中古マンションを購入するときは、重要事項説明で管理規約の該当条項を確認しておきましょう。「住戸の使用目的」「転貸の禁止」「営業行為の禁止」といった条項で、民泊が制限されているケースがあります。
また、購入時点では規約に民泊禁止の定めがなくても、後から管理組合の総会で民泊禁止が決議される可能性もあります。管理組合の運営方針や、過去の総会議事録も確認材料になります。
賃貸物件の場合は、オーナーの承諾だけでなく、建物全体の管理規約も確認しましょう。転貸(又貸し)にあたる民泊は、契約書や規約で禁止されているケースが大半です。
民泊開業前に確認すべきチェックリスト
物件選定の段階で、次の項目を順番に確認しましょう。
- 用途地域(都市計画情報)の確認
- 自治体の民泊条例(営業日数制限・禁止エリアなど)の確認
- 住宅宿泊事業法の届出要件(年間180日以下など)の確認
- 旅館業法(簡易宿所営業)で運営する場合は保健所への事前相談
- 消防法に基づく設備要件(火災警報器・消火器など)の確認
- 管理会社や近隣住民との関係(物件の管理規約・周辺環境)の確認
特にマンションの一室を民泊に使う場合は、管理規約で民泊・短期賃貸が禁止されていないかの確認が重要です。分譲マンションの管理組合によっては、民泊を禁止する規約改定が行われているケースもあります。
まとめ
用途地域の確認は、民泊物件選びの最初の関門です。法律上は営業できても、自治体の条例やマンション規約で制限される場合があるため、複数の情報源で確認することが重要です。
自治体の都市計画サイト、条例の内容、管理規約の3点を契約前に入念にチェックすることが、安定した民泊運営の第一歩になります。物件選定の早い段階で、自治体の窓口や専門家に相談しながら進めると確実です。
よくある質問
用途地域はどうやって調べますか?
自治体のウェブサイトで公開されている都市計画情報(用途地域・建ぺい率・容積率など)で確認できます。地図上で住所を入力して調べられるシステムを導入する自治体が増えているほか、都市計画課などの窓口で直接確認する方法もあります。
住居系の地域でも民泊はできますか?
住宅宿泊事業法に基づく民泊は、届出をすれば住居系の地域でも営業できます。ただし年間の営業日数は180日以下に制限され、自治体の条例で平日の営業禁止などの追加規制が設けられる場合もあります。
用途地域の確認だけで民泊の可否は判断できますか?
判断できません。自治体の条例、マンション管理規約、建築基準法、消防法、旅館業法など、複数の制度をあわせて確認する必要があります。
マンションの一室を民泊に使えますか?
管理規約で民泊や短期賃貸が禁止されている場合は利用できません。分譲マンションでは民泊を禁止する規約改定が進んでいるため、管理組合への確認が求められます。